U-NEXTオリジナル書籍

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U-NEXTオリジナル書籍

動画配信サービス「U-NEXT」オリジナル書籍のnoteです。 U-NEXTが手がけるオリジナル書籍の紹介を中心に、本にまつわる様々な話をお伝えします。 https://video.unext.jp/book/originals/book

マガジン

  • 試し読み / U-NEXTオリジナル書籍

    U-NEXTオリジナル書籍に関する「試し読み」を集めました。ぜひお気軽に手にとっていただけるとうれしいです。

  • 高瀬隼子さんエッセイ「こわいものをみた」(月1連載)

    小説家・高瀬隼子さんのエッセイ連載が始まります。 連載タイトルは「こわいものをみた」。 タイトルのとおり、ホラー好きの高瀬さんが日々感じた「こわい」をテーマしたエッセイです。 毎月第4金曜日更新。初回は5月24日です。 (バナーイラスト・デザイン:三好愛さん)

  • 渡辺由佳里さん「分断と連帯のスラング」(月1連載)

    俗語、流行語があらわす世相とは? またその背景には何が? アメリカ在住の翻訳者でエッセイストの渡辺由佳里さんが、 2024年のアメリカを"スラング"から描きとります。

  • 水戸部功さん 連載「装幀苦行」

    『これからの「正義」の話をしよう』のデザインなどで知られる、装幀家・水戸部功さんによる「デザインとは?」「装幀とは?」を考える連載です。

  • 書評 / U-NEXTオリジナル書籍

    U-NEXTオリジナル書籍に関する「書評」を集めました。選者のみなさんがどう物語を読んだのか、さまざまな視点をお楽しみください。

最近の記事

【11/20発売に先行して冒頭を大公開】山内マリコさん最新作『逃亡するガール』

     スタバ  スタバほど勉強に集中できる場所はない。家より塾より学校より、スタバが好きだ、ここが世界でいちばん落ち着く。週二回、高校の授業が終わって塾がはじまるまでの時間を、あたしはいつもスタバで過ごした。  学校の最寄り駅から〈富山地方鉄道〉に乗って電鉄富山駅で降り、マリエ一階のスタバに直行して席を確保するのがルーティン。この店舗はなぜかフロアが二つに分離している謎なつくりで、小さいほうの飲食スペースはいつも勉強する学生でいっぱいだった。ここの窓際、カウンター席を取

    • 「こわいものをみた」5 新しい恋愛がこわい(高瀬隼子)

      『新しい恋愛』刊行から一か月が経った。五つの短編小説が収録された本で、そのうちの一篇のタイトルが「新しい恋愛」という。タイトルを付けるのが苦手で、いつも最後まで書き終えてから、出ないな、なんかいいのないかな、全然出ない、と悩みつつ捻りだす。「新しい恋愛」も、ほかに数十個考えたタイトル案が全部しっくりこなくて、とはいえこれもしっくりきてるんですかね? どうなんでしょうか? と恐る恐る担当編集者に提出したものなのだけど、「ありそうでないタイトルでいいですね」と褒められたのでほっと

      • 【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ⑦

        流産  その首がねじれた。ルイスの指は瞬時に汗ばみ、イヤホンの録音ボタンから滑ってバインダーの上に落ちた。バインダーは、これまでの事実を書き留めた記録でいっぱいになっていたが、そんな事実など、全て意味がないも同然だった。  死体の首は、シャーリーンが入れた切り込みからの凝血で縞模様になっている。医学書では胸鎖乳突筋と書かれている右頸部の細長い筋が、吊り橋のケーブルのごとくピンと張り詰めていた。血が三滴、解剖台へとゆっくり垂れていく。彼らの頭の中では、ここ以外の世界の人々な

        • 【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ⑥

          見えない手    午後九時一七分、シャーリーンはメスを入れ、切開を開始。とりあえず全ての銃創を無視し、左耳の後ろから切り始め、自分のPM40メスを胸骨に向かってゆっくりと引いていく。身元不明遺体の肉がパン生地のように分かれた。右側も左側と同じように耳の後ろからメスを入れ、V字形に切り込む。次に、Y字カットを完成させるため、メスは腹部へと進んだ。フェイントをかけるかのごとく急に右に曲がってヘソをかわし、恥骨部で止まる。血は出ることは出たが、ごく少量だった。死んだ心臓は鼓動し

        【11/20発売に先行して冒頭を大公開】山内マリコさん最新作『逃亡するガール』

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        • 試し読み / U-NEXTオリジナル書籍
          58本
        • 高瀬隼子さんエッセイ「こわいものをみた」(月1連載)
          5本
        • 渡辺由佳里さん「分断と連帯のスラング」(月1連載)
          1本
        • 水戸部功さん 連載「装幀苦行」
          2本
        • 書評 / U-NEXTオリジナル書籍
          25本
        • 著者インタビュー / U-NEXTオリジナル書籍
          8本

        記事

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ⑤

          最後に笑うのは誰?  午後八時四二分、届け物の到着を知らせるベルが鳴った。それは、シャーリーンが通う美容院のチャイムと同じ、デジタル音の呼び鈴だった。それを聞いた彼女の本能的な反応も同じ。鏡で自分をチェックしようとするのだ。手洗いにあるトイレットペーパーでできる限りマスカラを拭き、体裁を整えてみたが、多少のインクは毛穴の奥に入り込んでしまったに違いない。彼女の肌はくすみ、クマができて目の下が凹んで見える。週に五回、目にしている顔と変わらない。冷蔵キャビネットから転がして取り

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ⑤

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ④

          悩ましき何かと何かの〝間〟   紙箱から取り出した青いゴム手袋を手に嵌めると、パチンと音が鳴った。 「くそインターンめ」。ルイスは思い出して、そう口走る。 「文句ばっかりね」と、シャーリーンが言う。 「否定はしないよ」 「否定? 楽しいくせに」 「ああ、楽しいさ」。彼は、「ディーナー、メスを頼む」と指し示す。  鋭利な道具が金属トレイに落ち、聞き慣れたシンバルのような音を立てる。 「アコセラ先生、文句ばかりだと血圧が上がるわよ。不眠症の原因にもなるし。私の医学

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ④

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ③

          ここがその場所    その飾り額は、かなり長いことルイスのオフィスに掛かっていたのだから、とっくに見るのをやめているべきだった。読み手の不安を煽る人騒がせな政治的投稿を拾い読みして時間を潰す、全く記憶にも残らない退屈なランチタイムが、平然と同じ場所に佇むその存在のせいで、一体何度邪魔されたことか。それには彼もうんざりしていた。飾り額の文言は、ソーシャルメディアで更新されるほとんどのコメントよりも短いが、何せ、ルイスがクリックして忘却の彼方に追いやることができない──ドアの

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ③

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ②

          灰色の霧   ルイス・アコセラが、カルド・ガジェゴというガリシア風スープの白インゲン豆をスプーンで追いかけているときだった──スペイン料理店「ファビのスパニッシュ・パレス」の表の窓が吹き飛んだのは。サンディエゴの検屍官補ゆえ、ルイスは、ガラスによるあらゆる外傷例に精通していた。車のフロントガラスに用いられている安全ガラスが頰に点々と残す、肉のえぐれた穴や、割れた鏡の大きめの破片で手首を裂く自殺行為の末の、白鳥の姿のようなパックリ開いた傷口のゾッとするような美しさを彼は知って

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ②

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ①

          でkえるらなわたしの罪wお赦して    9・11同時多発テロが起きる前、二一世紀に入った最初の数ヶ月間で、コンピューター設備のない僻地の前哨基地を除き、米国内の病院、高齢者介護施設、警察署は、生命に関する統計データ収集(Vital Statistics Data Collection:略称、VSDC)ネットワークへの参加が義務づけられた。このインターネット上のシステムは、系統解析および多次元データベースの米国モデル(American Model of Lineage an

          【試し読み】『The Living Dead』ジョージ・A・ロメロ&ダニエル・クラウス著/阿部清美訳 ①

          分断と連帯のスラング(1)Childless Cat Ladies

          フォーチュン500(全米上位500社)の中堅管理職だったアメリカ人の夫の異動と妊娠を機に32歳で会社勤めをやめた私は、「我々はチームである」という夫の言葉を信じて何十年も子育てと伴侶のサポートの仕事をクソ真面目にやってきた。かなり優秀なチームメンバーだったと自負しているのだが、この仕事に給料はないし、昇進もない。そこで自宅でもできる翻訳や文筆業を始めた。収入の足しにはほとんどならないが、第三者に対して「可視化」できる仕事をしないと自分を失ってしまいそうな危機感を覚えたからだ。

          分断と連帯のスラング(1)Childless Cat Ladies

          【第1話まるっと全文公開】小泉今日子さん小林聡美さんW主演ドラマ『団地のふたり』の続編『また団地のふたり』

          第一話 バターをやめた(い)日  1  5のつく日は、駅前の喫茶店〈まつ〉のホットケーキが安い。  プレーンの二枚重ねが、二〇〇円で食べられる。  一時は、その日にホットケーキを食べると、次回以降に使える割引券をもらえるシステムに変わったのだけれど、最近、また以前のように、当日食べるホットケーキが安くなった。  もちろん、利用客としては、そっちのほうが断然いい。 「行くよね、それは」 「行くよ」  誘い合わせて食べに行った帰り、桜井奈津子が友人の太田野枝と笑いながら団地内

          【第1話まるっと全文公開】小泉今日子さん小林聡美さんW主演ドラマ『団地のふたり』の続編『また団地のふたり』

          【試し読み】寺地はるなさんの連作シリーズ最終話『万事よろしく』

          ■著者紹介■あらすじ■本文谷川啓の手紙  自宅の鍵を送ります。電話で話したとおり、こちらはなにも心配いりません。あとは万事よろしく。 勝山克子の話  ね、ちょっとあなた。あなた、ほらーあの、あの人じゃない? 見たことある! テレビで見たことあるのよ、ああもう、喉のこのあたりまで出かかってんだけど、名前。タレントでしょう、あなた……違う? あ、わかった。ルミさま。なんとか院ルミさまだ。あ、ルイ? あー、匙小路ルイさま。そうかそうか、ごめんね、あたし人の名前おぼえるの苦手で

          【試し読み】寺地はるなさんの連作シリーズ最終話『万事よろしく』

          「こわいものをみた」4 座右の銘がこわい(高瀬隼子)

           時々座右の銘を聞かれるが、そんなものはない。ふつう、持っているものなのだろうか? 座右の銘を? みんないつ決めているんだろう?  新卒で就職した時、社内報の「新入社員紹介コーナー」をつくるというので、出身地、趣味、休日の過ごし方、そして座右の銘を答えるよう求められた。二十二歳当時のわたしに、心に留め置きいつも意識しているような言葉はなかったけれど、誌面を埋めるためになにか書かねばならない。それは人事担当者へ提出し、社内報を通して、直属の上司や先輩社員だけでなく、社内全体の関

          「こわいものをみた」4 座右の銘がこわい(高瀬隼子)

          《動物介在療法の小説》 前川ほまれ『臨床のスピカ』無料公開5

          第3章 2023年12月 真冬の蟬  白木で組まれた祭壇は、父にはもったいないほどの豪華な造りをしていた。高さは二メートル以上はありそうで、横幅も大人二人が簡単に横になれる長さだ。最上部の段には寺の本堂を模した物体が鎮座し、所々に牡丹の花や千切れ雲の透かし彫りが施されている。遺影の周囲には色鮮やかな生花が添えられ、そのすぐ側では同じ白木製の提灯が神々しい光を放っていた。  棺の前には焼香台が置かれ、細い蠟燭に灯る火が微かに揺れている。短い棒で叩くと澄んだ音が鳴る仏具は、なん

          《動物介在療法の小説》 前川ほまれ『臨床のスピカ』無料公開5

          《動物介在療法の小説》 前川ほまれ『臨床のスピカ』無料公開4

          ♯2 2012年 夏  再び星河ハウスに向かうことになったのは、一人と一頭の散歩に同行してから二ヶ月ほど経った週末だった。あの頃は夜風が冷たかったが、季節は確実に移り変わっている。自室の隅に置かれたテレビは、現在の気温が三十五度を超していることを教えていた。午前中からクーラーが起動しなくなった六畳間は、蒸し風呂のような熱気に満たされている。突然の災難を呪いながら、首筋を手で仰ぐ。毎年夏になると、高齢者が室内で熱中症になるというニュースを見掛けるが、今は人ごととは思えなかった

          《動物介在療法の小説》 前川ほまれ『臨床のスピカ』無料公開4

          《動物介在療法の小説》 前川ほまれ『臨床のスピカ』無料公開3

          第2章 2023年8月 水のないプール  隣のベッドから聞こえた音で、鈴木小夏は目を覚ました。何の音かはわからないが、頰を軽く打つような響きだった。すぐに、再びの静寂が訪れる。  枕元に顔を向けると、ベッドネームに印字された自分の名前が薄闇に霞んでいた。床頭台の上で充電していたスマホに手を伸ばし、寝起きのぼんやりした頭で時刻を確認する。まだ、朝の六時だ。溜息が出そうになるのをグッと堪え、病床を囲むグリーンのカーテンに目を向けた。病室の明かりが一斉に点灯するのは、午前七時。朝

          《動物介在療法の小説》 前川ほまれ『臨床のスピカ』無料公開3